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「国産調光操作卓の現状及び展望」MTC2017


 6月14,15日に開催されたMTC2017 では、昨今増加しているLED機器に対しての対応を考える2 つのセミナーが開催されました。
 15日に開催された「国産調光操作卓の現状及び展望」では、国産調光卓のLED機器へ
の対応についてパナソニック株式会社 大田氏、東芝ライテック株式会社 貞照氏、株式会社松村製作所 加藤氏、丸茂電機株式会社 森氏から、各社の現状をプレゼンしていただきました。
 協会誌9月号に掲載された、セミナー後のインタビューをwebでも再掲します。

参加者


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大田憲司氏

パナソニック株式会社エコソリューションズ社 
ライティング機器ビジネスユニット
調光システム部
調光システム企画・開発課 課長

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貞照知基氏

東芝ライテック株式会社
システム事業部
システム技術部
システム技術第一担当


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加藤春輝氏

株式会社松村電機製作所
開発部
課長
加藤 春輝氏

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森 義隆氏

丸茂電機株式会社
開発部
システム開発課
主任
(写真撮影/小川 峻毅)

文中では敬称を略させていただきます


● セミナーでは各社の卓についてご紹介をいただきましたが、今後増えていくLED などのフィクスチャにどう対応しているのかを詳しくお聞きしたいと思います。まずは各社の方向性についてお聞かせください。

大田 斬新なものを一方的に提案しても市場や現場は急には変わらないと思っています。
 レガシーな良さもありますし、今は従来シリーズと新シリーズを共存させ相乗効果も狙っています。新シリーズは新しい器具に積極的に対応し、従来シリーズでは専用モジュールを追加し対応しています。今は過渡期なので何が良いかは模索中です。

貞照 導入事例では現状の調光操作卓に一つ装置を追加してLED 器具に対応したりしています。またテレビスタジオなどは、フルLED化が進み、カラーLED器具の制御機能を実装した調光卓を納入する事もあります。

加藤 弊社の場合は一機種しかLEDの制御機能が入っていないので、LEDの部分を外に出してWindows のアプリケーションにしました。そこである程度熟成して下位の機種に入れるまたはリンクして使う。そういうスタンスで進めています。

 弊社も試行錯誤していて、LED専用の卓も作ったのですが、そうするとその操作も覚えなければならなくなります。多くの会館さんがまだ調光を使われている中でまずは調光卓。その中でLED を使えるように 既存の卓にプラスαで入れています。今までと操作感が変わらず、且つLED が使えるように、納めています。今後はもう少しムービングライト寄りになるかと思いますが劇場はまだまだ調光という市場が多いので、調光の操作系の良さは継承していこうと思っています。

● 劇場の場合、操作の簡単さを優先するのでしょうか。エフェクトなどの複雑な機能はどこまで入れていくべきだと思いますか?

大田 カラーやムービングのエフェクトのような機能は、常設卓では優先度は下がると思いますが出来たほうが良いと思います。一方でフォーカスや色の調整は常設卓でも強く求められていくと思うので、多機能にならざるを得ないと思います。

貞照 制御方式が今まで変わってきますので、タッチパネルでカラーを簡単に変えられるなどしています。どうしても今までのプリセットだけを使ってとしようとすると厳しいかと思います。

加藤 基本的には目的の色を簡単に作ることを主眼においています。その付加価値としてエフェクト機能をと考えています。

 今日のお客さんの質問で、「会館は時間が無いのでフィクスチャでは無くプリセットフェーダーでやりたい。」という意見がありました。そうするとRGB1本1本のあかり作りになるのですね。そうなると今までどおりの単色のエフェクトの作り方になります。慣れてくると他の作り方も試していただけると思うのですが、まだそれほど重要性は無いのかなと思っています。

● 各社さんポリカラーなど、登録してある色があるとのことでしたが、機種毎の色味の差などはどう対応されていますか。

大田 メーカー違い、機種違いの他、同じ機種でも使用時間の差などで個体差があったりするので、現場で合わせるしか無いという前提で、器具間のバラツキも含め調整した色をワンタッチで使えるようにしています。
 また、使用頻度の高い色は出来る限り近似色を出せるようにしていきたいと思っています。
 TESTA では使用可能な器具データの中にLee フィルターの代表10 色を事前登録し、その色をベースにして調整しやすくしています。

貞照 今回ご紹介したspecX の機能で機種毎の色を登録する機能があって、同時にあかりを出して、それぞれの色を調整して登録すると機種ごとの値を登録できます。

加藤 基本的には東芝さんと同じでまずは登録したる色を参考データーとして出して必要なら修正したものを新たにパレットに登録するというやり方です。

 弊社も同じで、ポリカラーは登録してありますが、あくまで基準値で機種が違えば同じ色にはなりません。そこで調整していただいてユーザーカラー、カスタムカラーとして登録していただければワンアクションで使えるようになります。

● RGB の3 色だけで無く、Wやアンバーの素子を持つ5 色や6 色の機材でも同じように使用できますか。

大田 アンバーなどのパラメーターを足した状態で修正できます。ディマーやズームの値を含めた状態でカラーパレットに登録することも可能です。

貞照 3 色の器具も6 色の器具でも一つのカラーパレットに登録できます。

加藤 色のボタンはRGBの値しか持っていないのですが、それにアンバーなどを足してパレットに登録することはできます。

 カラーピッカーで選択できるのはRGB だけなので、そこから必要に応じてW やアンバーなどを足して作っていただいて登録していただくことになります。

● カラーピッカーはRGB の値しか無いのですか。

大田 カラーピッカーが連動するのは合成式、変換式が数式で定義されているRGB、CMY、HSV の値だけですね。ホワイトをサチュレーションに反映させる工夫をしたことがありますが、その機能の有効性は微妙な感じです。

● 先ほどの森さんのコメントでもありましたが、LED 灯体の1色毎をディマーとして割り付けたいという要望もあると思いますが、そうするとパレットを使うことは難しいですよね。

大田 その使い方の場合はピッカーは使えませんが、パレットに登録して使用することはできます。

貞照 納入事例で、サブマスターに一色づつを登録して、そのサブマスターのフェーダーをプリセットフェーダに割り付けて呼び出せるようにしたことはあります。その場合クロスでしか使えないし、修正も難しくなります。

加藤 ディマー扱いですとパレットの使用は難しいですね。

 そういう風にディマー扱いをすると、フィクスチャーで扱った場合と色の出方が変わってしまうのですね。赤で作ったサブマスターと緑で作ったサブマスターを上げると、前者はHTPなので混ざってしまいますが、後者はLTP なので後に上げたほうの色になります。今までのホリの感覚でディマー扱いに慣れている方は、乗り移りが難しいかもしれません。

● LED 器具を扱う上でLTP は必須だと思いますが、どう対応されていますか。

大田 カラーはHTP だと意図しない形で色が混ざってしまうケースが想定されますので注意が必要です。シーンを進める場合はHTP で扱っても問題無いと思います。個々のチャンネルをLTP で扱うかHTP で扱うかは、器具データで設定できるようになっています。
 Intensity チャンネルを持つ器具も多いですが、それを持たない器具でもRGB などカラーチャンネルに対して仮想的にIntensity の役割のディマーチャンネルを割り当てる機能(バーチャルディマー)にも対応しています。

貞照 基本はHTPですが、LED器具のエフェクトの再生、サブマスターの再生等でHTPでは意図した明かりにならない用途では、LTP制御としています。

加藤 弊社の場合はLTP にはまだ対応していません。HTP で様子を見ている状況です。カラーPC は再生が1系統なので、HTP でキューを進めても問題がありません。

森 弊社の場合、一つの器具をフィクスチャーで使うかフェーダーで使うか、どっちも出来ます。どちらを使うかでLTP かHTP かが変わります。HTP に慣れていてそのほうが早いという方はそちらを、カラーピッカーも使いたい、LTP の挙動も大丈夫という方はそちらを選んでいただければと思います。

● JASCII は各社さん対応されているとのことでしたが、フルカラーのLED であっても、各ch の値として記憶できているということですね。

4 名 はい

加藤 ちょと気になるのはJASCII は出力する時にパーセントで出力するかHEX(256 段階)で出力するか2 種類あるんですね。パーセントだと色がずれることがあるかと思います。

● 色パレットやエフェクトなどのデーターを各社の卓で共有するのは難しいですよね。

大田 今は各製品独自にデータをID化し、ID を介して間接的にデータを参照するなどの設計都合もありますし、時間の設定や表現の仕方も多様だと思うので、「データを共通化する=調光卓の内部設計を共通化する」ということになるので、そこまではなかなか難しいかと思います。

● RDM への対応はどういうスタンスでしょうか。

大田 全てがRDM に対応している環境ならメリットは大きいのですが、部分的にRDM が導入されている段階では、ユーザのメリットは限定的だと思います。しかし、そういう位置付けの技術や仕様は一定レベルまで普及すると、一気に全体に普及が進むと思います。テレビスタジオは流れが早く、基本RDM 対応で納入させていただいています。

貞照 劇場ではLED 器具がボーダーとかホリだけとかで部分的に入っていることが多いのですが、テレビスタジオではフルLED にしたいなどの要望がある場合もあり、そういう所はRDMで改修したりしています。

加藤 弊社の場合は機器側から検討しています。

 弊社も対応を考えておりまして、実験/ 検証は進めているのですが、まだ対応しましたとアナウンスは出来ないのですが、近々の課題だと思っています。

● RDM は今後、普及していくのでしょうか。

 RDM に対応するには、スプリッターなど全てが対応しないといけない
ので、既設の会館などで、一気に進むことはすぐには無いかと思います。

● 新しい器具はRDM 対応になっていって、使っていなくても、気が付くと持っている器具のほとんどにRDMが入っているみたいな状況になるのでしょうか。

貞照 LED 器具に関して入れていく方向です。

加藤 はい

 はい

大田 はい

● RDM の次への対応も、もう考えていますか。

 RDM は速度的には遅いのでイーサネット系に信号を載せることは急いで対応していこうと思っています。

大田 RDM をイーサに載せるための規格はESTA で策定されているRDMnet やベンダー規格で広がっているArt-Net におけるRDM 拡張のArtRDM などがメジャーだと思うのですが、まだ画一的なものは無い状態です。
 当社は現段階での技術を見極めた上で、イーサネットを介してRDMを実行するための機器や管理ソフトを既に開発し納入しています。現場の設備構成に合わせて多灯管理を高速化するための改良にも取り組んでいます。

● パナソニックのTESTA のように、フルにムービングに対応しようという方向はあるのでしょうか。

貞照 海外メーカーの卓のようにというよりは、オペレーターさんの使い勝手が良いように従来卓の延長線上で使えるように考えています。pan/tiltには対応していないのですがストロボなどのパラメーターには対応するようにしています。

加藤 ムービング制御ができる機種もありますが、あくまでもセッティング、止まっている状態を作るという考えです。

 弊社のシューティング機能付操作卓では、海外の器具のデータを入れてはいます。会館に収める時に、器具をお借りしてパラメーターを入れて動くようにしてはいるのですが、パラメーターの種類が多すぎて一部機能になっている部分もあります。基本的な所は押さえているのでできるだけ拡大していこうとは思っています。

● 今後の展望をお聞かせください。

大田 これまで従来卓で培ってきた現場知識と、斬新なものに挑戦した新シリーズ、それぞれの資産があるので、融合させていきたいと思っています。LED化で多機能化、多様化する器具を有効に活用しながら、短い時間でキューを作りたいという会館のニーズに「ジャスト・フィット」した卓の開発に取り組んでいきたいと思っています。

貞照 テレビスタジオなどで納入した新しい技術を 標準品にフィードバックしつつ、劇場で3 段プリセットを使いながらどうカラーのLED を融合させていくのか、オペレーターさんが使いやすい卓をうまく作っていけたらと思っています。

加藤 弊社も東芝さんと一緒で、まずは使い勝手を優先して、新しい機能を随時入れていくという方向です。

 弊社も長い歴史の中で調光卓などで評価されている部分はそのまま活かしていきたいと思っていますし、時代と共にそれだけで足りなくなった部分は時代に沿った形で対応してい
きたいと思っています。

● 今日はありがとうございました。
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