会長年頭挨拶
コロナ後の厳しい時代に向かって
公益社団法人 日本照明家協会 会長
勝柴 次朗
あけましておめでとうございます。
一昨年から長く続いてきた「コロナ禍」も、昨年の後半からようやく沈静化して来たように見受けられます。この期間、特に賛助会員の各社様におかれましては、厳しい状況にもかかわらず当協会の運営への変わらぬ御理解と御支援を賜りましたこと、心より感謝申し上げます。また、正会員の皆様におかれましては、当協会が未曽有の危機的状況に置かれる中、事業の中止や延期などの措置により多大な御迷惑と御心配をおかけしましたことをお詫び申し上げますとともに、協会への変わらぬ御理解と御協力、そして応援をいただきましたこと、厚く御礼申し上げます。感染拡大についてはまだ予断を許さない状況ではありますが、私たちの活動の場が早く安定した状態になるよう、心より願っております。
さて、来年2023年は日本照明家協会の社団法人設立から50周年となる年です。当協会が社団法人として設立された1973年は、戦後復興を軸にした高度経済成長が一旦頂点に達した年にあたります。その当時と現在とでは、社会情勢や経済情勢に大きな隔たりがあります。当協会の基本理念は設立当初も現在も、そして今後も変わるものではないと思いますが、具体的なその在り方について考える時、今までの形態をただそのまま継承するだけでなく、常に、最善な形を継続して探求することの必要性を感じます。
当協会が設立された理念の中心には、「照明家の地位向上」という大きな目的があります。この50年を振り返ってみますと、社会全体への浸透という意味では、職業の多様性の認知が50年前よりも大きく進み、私たちのような言わば「裏方」の、表には目立たない職業の存在への理解もとても進んだと感じています。「照明」という職業の存在すら知らない人が多かった50年前から比べると、現在の私たちの仕事に対する社会の認知は、とても高まったと言って良いと思います。ですが一方で、そもそも「照明家の地位向上」とは何を意味するのかと考えてみると、単に社会の人々に認知されるだけでは十分とは言えないのかも知れないと思います。
個人の照明家を正会員とする当協会にとって、「照明家の地位向上」とは具体的に何を指すのでしょうか。それは、照明家個人の働く環境を健全に保ち、さらに改善を目指していくことだと私は考えています。ここでいう働く環境とは、金銭や労働時間といった雇用条件だけでなく、ハラスメント防止やジェンダー平等といった社会的な観点も当然含めて考えなければなりません。
しかし、昨今の情勢を見ると、「働き方改革」による労働時間の規格化や、来年から導入が計画されている「インボイス制度」による消費税の納付の厳格化など、照明事業者・従業員・フリーランスのいずれにとっても厳しく、かつ利害の対立を招きかねない制度の導入の流れが進みつつあることは否定できません。社会全体の流れそのものが、私たちにとって厳しいものであり、すでに達成されたかに見える私たちの仕事の社会への認知も、その「価値の理解」という意味では、まだまだ疑問の余地があると考えざるを得ません。
このような厳しい情勢にあって、大切になるのは情報と理念の共有だと思います。会員の皆様には、当協会を情報共有の場、そして理念共有の場としてぜひ御活用いただきたく思います。当協会としてもそのための場となることを目指して、照明家の活動環境がより良いものとなるよう、体制を整え努力をして参る所存です。
どうか皆様のお力を引き続きお貸しくださいますよう、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。